- アイデンティティの費用は作業時間ではなく、成果物の点数と戦略の深さで決まります。
- デザイン費は一度きり、印刷費は数量と加工で変動します。
- 見積書は「含まれるもの」より「含まれないもの」を確認してください。予算はそこで動きます。
- 意思決定者の人数は、見積もりに実際に影響します。
デザインの見積もりは比較が難しいものです。事務所ごとに範囲の切り方が違うためです。弊社がどう範囲と費用を組み立てているかを説明します。他社様の提案と読み比べる際の参考になれば幸いです。
範囲はどのように決まるか
二つの変数で決まります。デザインが必要な成果物が何点あるか、そして戦略段階をどこまで掘るかです。作業時間はその結果であって、前提ではありません。
成果物は数えられます。ロゴ、名刺、レターヘッド、サイン、パッケージ、ウェブサイトはそれぞれ別の設計と仕様策定を伴います。これを正確に列挙することが、複数の見積もりを比較可能にします。
戦略の深さは見えにくいものの、費用への影響はより大きくなります。調査と関係者への聞き取りから始める案件と、合意済みのブリーフから始める案件は別の仕事です。どちらが正しいということではなく、金額だけを並べて比べるべきではないということです。
なぜデザインと印刷を分けて見積もるのか
性質が異なるためです。デザインは一度きりの費用で、資産が残ります。印刷は数量、用紙、加工で変動する反復費用で、しかも初期費用は数量が減っても下がりません。
デザインと印刷を含む見積もりを、オンライン印刷サービスの価格と比較しても意味がありません。後者はテンプレートを使い、印刷のみを見積もっています。どちらも正当な選択肢ですが、同じものを買っているわけではありません。
印刷費の内訳は台湾の印刷事情をご覧ください。
なぜ名刺単体では見積もらないのか
名刺を正しく作る費用が、その下にアイデンティティがあるかどうかでほぼ決まってしまうためです。ガイドラインがあれば、名刺は既存ルールの適用です。無ければ、名刺が事実上のアイデンティティになります。
後者の場合、費用は後から現れます。土台なく作られた名刺は、ロゴの扱い、色、書体を暗黙のうちに決めてしまいます。その後にウェブサイト、サイン、パッケージを作る際、それらを引き継ぐか、矛盾させるかのどちらかになります。どちらも、最初に意図して決めるより費用がかかります。
既にガイドラインをお持ちであれば、それに沿って名刺単体でお見積もりします。
提案書には何が書かれているべきか
四つの問いに、質問せずとも答えられる状態が望ましいと考えています。最終的に何が手元に残るか、修正は何回含まれるか、何が明確に含まれないか、そして権利は誰のものになるか。
- 成果物:項目ごとに、データ形式まで明記
- 工程と関門:各時点で何を承認するのか、先へ進むとは何を意味するのか
- 修正回数:段階ごとの回数と、1 回の定義
- 含まれないもの:撮影、コピーライティング、翻訳、書体ライセンス、印刷費、第三者への支払い
- 権利:何が移転し、何が使用許諾にとどまるか
最も注意深く読むべきは「含まれないもの」です。予算の想定外は、双方が当然と考えて記載しなかった項目から生じます。書体ライセンスと翻訳がその代表です。
支払いはどう進むか
着手金、合意した関門での中間金、納品時の残金という段階払いが一般的です。支払いの区切りは暦ではなく、承認の関門に対応させます。
国際案件では、通貨、銀行手数料の負担、請求先の法人格を着手前に決めておきます。いずれも小さな項目ですが、最初の請求時に持ち越すと摩擦になります。
費用を最も動かす要因は何か
成果物の点数、戦略の深さ、そして意思決定者の人数です。三つ目は最も過小評価されがちです。
意思決定者が増えると、検討の回数が増え、相反するご指摘の調整が必要になり、通過済みの関門に戻る可能性も上がります。これは難易度に対する割増ではなく、実際の作業量の差です。承認権限をお持ちの方を最初に明示していただければ、現実的な範囲設定ができます。進め方の詳細は海外デザイン会社との進め方をご覧ください。
既定で含まれないものは何か
特に記載のない限り、印刷、撮影、コピーライティング、翻訳、書体ライセンス、第三者プラットフォームの利用料は含まれません。いずれも追加は可能ですが、実費であり、こちらで吸収する性質のものではありません。
書体ライセンスは特に注意が必要です。制作側のライセンスは制作側の使用を対象としており、発注側の使用は含まれません。アイデンティティが商用書体に依存する場合、発注側名義でのライセンス取得が必要です。ライセンス形態によっては継続的な費用にもなります。詳細は納品データと権利をご覧ください。
よくあるご質問
予算が決まっている場合も対応できますか
可能です。ご予算に合わせて範囲を確定します。その金額で実施できる成果物と戦略の深さをご提案し、含まれない部分を明示します。全体の範囲を無理に圧縮するより確実です。圧縮は多くの場合、費用を後の段階へ移動させるだけになります。
初回のご相談は有料ですか
無料です。案件として成立するか、おおよそ何が必要かを確認するための最初のお話し合いに費用はかかりません。ご提案をお受けいただいた時点から有償の作業が始まります。
途中で範囲が変わった場合はどうなりますか
作業に着手する前に、費用と日程への影響を含めて契約の変更として記録します。デザイン方向の承認後に成果物を追加するのは比較的容易です。展開開始後に戦略を変更する場合は、通過済みの関門に戻ることになり、こちらは影響が大きくなります。
完成したデザインの権利は誰のものですか
着手前に契約で定めます。一般的には、最終承認された成果物は残金のお支払いをもって移転し、採用されなかった案と作業データは制作側に残ります。書体など第三者の構成要素は、いずれの側も所有ではなく使用許諾を受ける形になります。
執筆者について
台湾・台中の好心地文創が作成しました。ここで説明した範囲設定は実際の提案書で用いているもので、「含まれないもの」を強調しているのは、国境をまたぐ案件で想定外の費用が生じやすい箇所だからです。