- 台湾の印刷産業は地理的に集中しており、校正と製造の工程が短くなります。
- 500 部未満はオンデマンド、それ以上はオフセットが経済的で、特色も使えます。
- 加工の初期費用は数量に比例しないため、少部数の箔押しは単価が跳ね上がります。
- 色の承認は本機校正でのみ可能です。簡易校正で確認できるのはレイアウトまでです。
印刷の品質は設備よりも、仕様の伝え方で決まります。台湾で何ができるのか、何を指定すべきかを実務の観点から整理します。
台湾の印刷の特徴は何か
供給網が地理的に集中していることです。紙商、オフセット印刷所、加工業者が同じ地区に集まっている例が多く、材料と仕掛品が数時間単位で行き来します。
発注側から見ると、納期が短いこと、小ロットが成立すること、校正のやり取りが速いことに現れます。他の市場では特注扱いになる加工が、ここでは日常的に手配できるという面もあります。
一方で工程が速いぶん、曖昧な仕様が確認されずに解釈されて進む危険があります。指示の精度が相対的に重要になります。
どの印刷方式を選ぶべきか
500 部程度までと短納期案件はオンデマンド印刷、それを超える数量と特色が必要な案件はオフセット印刷が適しています。
オンデマンド印刷
版が不要なため初期費用がかからず、納期は通常 1 から 3 営業日です。可変データにも対応でき、チーム全員分の名刺を一度に出力する場合に有効です。
制約は、ロット間の色の再現性が安定しないこと、特色が使えないこと、厚紙への対応に限界があることです。
オフセット印刷
色ごとに版を作ります。色が安定し、特色や金銀インキが使え、用紙と加工の選択肢も広く、数量が増えるほど単価が下がります。
制約は製版費が発生するため少部数では割高になること、加工前で 5 から 7 営業日程度の納期が必要になることです。
活版印刷
凸状の版を紙に押し込み、へこみを残す方式です。効果を出すには厚みのある低密度の紙、特にコットン紙が必要で、広いベタ面や精細な画像には向きません。
用紙にはどのような選択肢があるか
大きく塗工紙、非塗工のファインペーパー、コットン紙、特殊素材の四種類です。実務では前二者が大半を占めます。
- 塗工紙(コート・マットコート):色の再現性が最も高く、安価で常時在庫があります。手触りは平凡です。
- 非塗工ファインペーパー:自然な表面で手触りが良好です。インキが繊維に沈むため、塗工紙より 1 から 2 段暗く、彩度も落ちます。
- コットン紙:柔らかくかさ高で、活版や深いエンボスに最適です。ベタ面のムラと細い文字の滲みには不向きです。
- 特殊素材:金属、透明樹脂、木材など。印象は強いですが費用が高く、製造経路が全く異なります。
計画時に最も重要なのは、非塗工紙での色の沈みです。ブランドカラーの彩度が高い場合、CMYK の掛け合わせでは再現できず、特色の指定が必要になることが多くあります。
加工にはどのような選択肢があるか
箔押し、エンボスとデボス、部分ニス、抜き加工が一般的です。いずれも台湾では日常的に手配でき、いずれも数量に比例しない初期費用がかかります。
- 箔押し:熱と圧で箔を転写します。ロゴなど単一要素に、濃色の紙で使うと最も効果的です。
- デボス:紙に押し込んでへこませます。かさ高い紙でないと効果が出ません。
- 部分ニス:マットな面に部分的な光沢をつけ、色を加えずに対比を作ります。
- 抜き加工:角丸や特殊な外形。抜き型が必要です。
- 小口染め:紙の側面に色をつけます。十分な側面積を得るために厚紙が必要です。
少部数では初期費用が支配的になるため、200 枚の箔押しは 2,000 枚の箔押しより 1 枚あたりが高くなります。予算に制約がある場合は、加工を足すより用紙を上げるほうが、支出あたりの体感品質の向上は大きくなります。
納期はどの程度見るべきか
オンデマンドで 1 から 3 営業日、オフセットで 5 から 7 営業日、加工を加えるとさらに 3 から 5 営業日です。校正を含めると全体で 2 週間を見ておくと安全です。
納期が延びる要因は三つあります。取り寄せが必要な特殊紙、外注に出す加工、そして校正の往復回数です。急ぎの場合は、在庫のある用紙とオンデマンド印刷、加工なしという組み合わせが最も確実です。
校正はどう進めるか
校正には二種類あり、答えられる問いが違います。簡易校正はレイアウト、文字、配置の確認用です。実際の機械と指定用紙で刷る本機校正だけが、色と加工の承認の根拠になります。
本機校正では五点を確認します。ブランドカラーを記憶ではなく実物の色見本と照合すること、指定用紙上での最小文字の判読性、箔押しやデボスの見当、両面の見当精度、そして裁断後に切れている要素がないことです。
仕様書には何を書くべきか
六項目を書面で明示します。仕上がりサイズ、用紙と斤量、印刷面、色数、加工の種類と位置、数量です。口頭で決めた内容も文面で残します。
入稿前に印刷所へ確認すべき点が三つあります。塗り足しの必要量、トンボを残すかどうか、受け付けるデータ形式です。これらは印刷所ごとに異なるため、先に聞いておくと手戻りを防げます。
案件終了時にお渡しするデータについては納品データと権利をご覧ください。
よくあるご質問
台湾で製造して日本へ発送できますか
可能です。印刷物は軽量で嵩張らないため、輸送費が判断を左右することはあまりありません。台湾で作るか日本の印刷所に入稿するかは、主に加工の要件で決まります。台湾のほうが手配しやすい加工もあります。
増刷したら色が変わったのはなぜですか
紙のロットによる白色度の差、印刷機ごとの色管理の違い、特色ではなく CMYK の掛け合わせで指定していたこと、のいずれかが主な原因です。長期的に揃えるには特色を指定し、用紙とインキの番号をブランドガイドラインに記録します。
黒い文字はスミ 1 色とリッチブラックのどちらですか
小さい文字はスミ 1 色です。リッチブラックは版が少しでもずれると小さい文字の縁に色が出ます。リッチブラックは濃度が欲しい広いベタ面に限定します。
最小ロットはどのくらいですか
オンデマンドで 50 から 100 枚程度から可能です。加工を伴うオフセットは、初期費用が数量に関わらず発生するため、数百枚以上でないと現実的ではありません。
執筆者について
台湾・台中の好心地文創が作成しました。上記の確認項目は毎回の印刷案件で確認しているもので、特に塗り足しの量とスミ 1 色の指定は、初回のお取引で最も見落とされやすい二点です。